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  鍋横物語
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第1章
第2章
1 青梅街道界隈
2 道標のミステリー
3 堀之内街道沿い
 (1) しがらき山の一本松
 (2) 雑木林は遊び場
4 十貫坂周辺
5 神田川
6 洋館
7 いろいろな商売
8 懐かしの映画館
9 神社
10 本の中にみる”鍋横”の記述
 
第3章
第4章


(1) しがらき山の一本松

語り部:中村せい(明治39年生)


 しがらき山の一本松は、堀之内街道沿いにあって、大きく枝を広げて日差しを遮っているためか、木の下はいつもジメジメしていたのを覚えています。
 一本松の下の方は谷底のようになっていて、降りていくと清水が湧き、荒れ果てた東屋(あずまや)がありました。私はそこを「お曼陀羅屋敷(まんだらやしき)」と呼んでぃました。その脇には小川が流れていて、緑風荘(昭和16年頃建築)の裏から杉並能楽堂の前の沼を抜けて、神田川へと注いでいました。
 シジミやメダカを取り、神田川ではドジョウを、本郷たんぼではセリを摘んだりと、現在では想像もできないほどの自然がいっぱいでした。小川と言っても雨が降ると増水し流れが速くなり、昭和27〜28年頃だったと思いますが、落ちて溺れた人もいました。
 私の家の辺りもいも畑や麦畑で、その先に安田邸の洋館がそびえていました。安田邸の脇の道は竹やぶで裸電球が薄暗く、提灯で足元を灯しながら歩きました。昭和の始めには、その道沿いにあった国鉄の跡地(和田1‐20付近)に汽車が置いてあったのを覚えています。



杉並能楽堂前にあった沼

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