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  鍋横物語
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第1章
第2章
第3章
1 道・街道・道路
2 商いを通して見た街
3 空き地は社交の場
4 まちの情景・風物
5 まちが変わる ―関東大震災・第二次世界大戦によって―
6 歴史を移す≪お題目石の移設≫
7 歴史を掘る≪転車台の現れた日≫
8 懐かしくありませんか?
 
第4章


7 歴史掘る


 

≪転車台の現れた日≫

 平成2年にまちを観察する活動を始めて以来、鍋横で育った人達との話の中に「友達5、6人で回して乗って遊んだ。」「遊んでいるとバスが来て危ないからと怒られた。」「家の中にバスが入っていって前向きに出てくるのが子ども心に不思議だった。」「確か・・・現在は東横喫茶店(本町4−30)になっているが、その中にあったよ。」などと、よく出てきました。調べると転車台(円形の回転する台にバスを乗せて前後に方向転換する装置)のことでした。




 戦前戦後のある時期、鍋屋横丁を始発とする大宮八幡に行く東横乗り合いバスの発着所がありました。道幅が大変狭くバスがUターンできないのでそのために転車台(手動式)が必要でした。昭和6年に転車台を囲むように建てられた2階建ての建物は、幸いにも戦火を免れ無事でした。戦後になりバス路線の変更によって、発着所も廃止されました。
 東横喫茶店のご主人が昔の記憶を話してくれました。「昭和21年に転車台の上に床を張り、内部を改装し店舗として50数年間使っていました。ですから、地下にそのまま埋まっているはずです。」
 建物を取り壊す日が来たら、ぜひ見てみたいという観察隊のメンバーの夢が実現する日がやって来ました。
 マンション建設のため建物解体という話があり、土地の所有者に「取り壊すときには転車台を写真やビデオなどで記録して残したいのでぜひ見たい」とお願いしたところ、「解体業者との日程調整がうまくいかないことや作業の妨げになると困る。取り壊し方も必ずしも希望に添えないこともある。」と言われ、「それでは、その前に私たちで掘り起こしてもいいですか?」と尋ね、所有者の了解を得ました。




ほこりの中、転車台の出現を待つ発掘作業


 平成14年2月9日、永島工務店(本町6−3)、山崎土木(中央5−19)の協力により、観察隊のメンバーも含め総勢10名で作業が始まりました。この様子を記録に残すため、“シテイーテレビなかの”に情報を提供し2月21日にその模様が放映されました。
 ドリルでコンクリートを壊すダダーンという音、もうもうとたつ埃の中で作業をすること2時間あまり、点検口の蓋らしい鉄板に行き当たりました。錆付いた蓋を開けてみると、50数年ぶりに姿を現しました。
 地下は2メートル以上もあり、垂直につけられた階段も当時のままで、階段を下りると転車台の内部構造が見えました。
 内部は写真のようになっていました。取り壊しされる3月末までの間に話を聞いた興味のある地域の人たちや、東京交通博物館の学芸員の方や他の地域の歴史を研究する会の方々が大勢見学に来ました。
 平成14年4月1日発行の「地域ニュースなべよこ」4月号に転車台の発掘とお題目石の移設を特集しました。



転車台中心部の支柱


転車台の掘り出し作業参加者の感想

★ずいぶん昔のものがようやくでてきたね。みんな一生懸命やったから・・・(談:永島弘昌)
★昔のバスがここでUターンしてたんですね。40数年もここに住んでいるけれど、知らなかった。やりがいのある仕事でした。(談:北原一幸)
★どんなものが出てくるか、興味があって手伝ったが、月日を越えても風化せず、鍋横の地に眠っていた転車台が出てきたときは大変感激した。(談:清水喜峰)
★50数年ぶりに私の子どもの頃、これで大いに遊んだ記憶がよみがえり発掘されて思い出がひとしおでてきました。同時に懐かしく貴重な資料的なものであることが再確認できたことが第一です。できれば資料館などで保存できればいいが、都内では無理だという話を聞いている。貴重な存在だと思うが壊されるのが非常に名残惜しい気がする。(談:江藤春雄)

転車台に思いをめぐらせ

★家の中にバスが入っていって前向きに出てくるのが子ども心に不思議たったことと、車掌さん(女性)が、かばんを前にぶら下げ笛をピーピー吹いていた姿が思いだされた。(談:大羽圭子)
★小学校2年生の頃、(昭和14年)兄とふたりでこづかいを貰うとバス(片道子ども2銭)に乗りたかったこともあってよく大宮公園に行き魚釣りをして遊んだ。食べ物などを買ったりで帰りのバス代を使ってしまい、夕方暗くなりかけた道を、泣きながら家まで歩いて帰ったことを思い出しました。(談:桜田悦江)



解体される転車台(平成14年4月9日)

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