(3) 文字の解読
1世紀頃から漢字が伝えられましたが、日本語と構造上の違いなどから、その用い方にいろいろの工夫がされたり、日本文を現すのに漢字だけでは対応できないため、漢字を仮名に簡略化して用いるようになりました。その過程で原字からは想像もできない平仮名を作り上げたのです。
『古筆かな字艦』を見ると、は、(保・報・本・賓・奉)の略で変態仮名の(小野道風筆)、(元暦萬葉集)、(源氏絵巻詞書)が使われたと思われます。は(部・邊・弊・倍・遍)の略で、 (小野道風筆)、(源頼政筆)、(元暦萬葉集)に似ています。これらのことから「ほりの内へ」と刻まれていると解読してみました。
これに対し、の解読について次の意見をいただきました。
道標の写真を拝見しましたところの文字の最後の一回転がどうもはっきりせず、むしろ折り返して右下で止め、という筆の運びになっている様に見えます。そこで児玉幸多編『くずし字用例辞典』で道を引きましたところ、「筆の運び」「最後の部分の右下の止め」など用例()に近く、私は「ほりの内道」と読んだ方がよいのではと考えました。
|