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  鍋横物語
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第1章
第2章
1 青梅街道界隈
 (1) 昭和初期の洋食屋
 (2) 兄ちゃんと通った路
 (3) 鍋横始発の東横バス
 (4) ターンテーブル(転車台)
 (5) 東横バスの名残
2 道標のミステリー
3 堀之内街道沿い
4 十貫坂周辺
5 神田川
6 洋館
7 いろいろな商売
8 懐かしの映画館
9 神社
10 本の中にみる”鍋横”の記述
 
第3章
第4章


(2) 兄ちゃんと通った路

語り部:朝倉春江(昭和2年生)


  小学校3年生の頃、宮里37番地(本町4 −24)に引っ越しましたが、それまで通っていた谷戸小学校に2歳年上の「兄ちゃん」といっしょに通学していました。
 通学には青梅街道を通っていきましたが、鍋横交差点近くの「野々山パン屋」の横を通ると、パンの粉で顔中真っ白にした店員さんが「いってらっしゃい」と毎朝声をかけてくれました。
 その当時(昭和10年頃)の青梅街道には市内電車が走っていましたが、荷物は牛や馬が運んでいました。
 あるとき、先を行く兄ちゃんを追って鍋横交差点に来ると、止まっていた馬が突然おしっこを始めたのです。蛇口を全開にしたような勢いで、みるみるうちに辺り一面泡が広がっていきました。あまりの驚きで立ち尽くす私に「早く渡ってこい、遅刻するぞ」と手招きする兄ちゃんの姿がありました。走って後を追う私に少し怒りながらも、気遣って振り向き振り向き先を行くやさしい兄ちゃんは終戦の前年に戦死してしまいました。その兄ちゃんの思い出と重なって、今も忘れられない出来事となっています。


昭和初期の地図

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