(2) 風情ある町並
語り部:岡田富士子(大正15年生)
昭和38年に子どもの通学のため、杉並から今のところ(氷川神社の裏)に引越してきました。この辺りには、情報局総裁がお住まいだったお宅など、大きな家がいくつかありました。東大独文学の山下教授のお宅は風情のある日本家屋でした。山下さんの弟が山窩小説家の三角寛が亡くなった後、書斎をここに移築したそうです。皇太后のデザイナーだった田中千代さんのご実家(松井子爵)もこの近所でした。高い塀で囲まれた大きな家が多かったせいか夜道を歩くのは少し怖かった思い出があります。
今では考えられないことですが、昔は空気も環境も良く、都心に住んでいた方の避暑地だったそうです。時代の流れで、家並みもすっかり変わり、風情も薄れて寂しい気がします。
買い物は、鍋横商店街ですることが多かったですね。瀬戸物屋の「小川園」や鍋横交差点近くにあった肉屋の「大中」などよく行きました。大中のおじさんは優しい方で、買い物帰りに寄って荷物が多いと一緒に届けてくださいました。今では懐かしい思い出になっています。
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